「東日本大震災による影響調査」報告書  

調査目的

本アンケート調査は平成 23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災による前橋市内の当所会員企業の直接的被害状況や計画停電・風評被害などによる間接的被害状況を把握するとともに、今後懸念される経営上の問題等について把握すべく実施しました。 
本アンケート調査を通して、今後の企業における危機管理上のノウハウを蓄積するとともに、企業支援策の検討や行政等への要望・提言だけでなく、今夏の企業における節電対策への対応策を検討するための基礎資料として活用することを目的に当該調査を実施しました。

得られた調査結果を基に報告書を作成しました。

  ●「東日本大震災による影響調査」報告書(概要)

   ●「東日本大震災による影響調査」報告書

  



調査内容

●地震発生直後から約1ヶ月間に実際に出た影響(選択式)
●3段階評価による業況調査(選択式)
●計画停電の実施による影響と対応策(選択式)
●今夏の企業における節電対策(選択式)
●今後、経営上懸念される課題点・問題点(選択式)
●防災、危機管理上取り組むようになった事項(選択式)
●行政等への要望について(選択式)
●自由回答欄 



調査期間

42 日間

自 :平成 23 年4月 20 日(水)
至 :平成 23 年5月 31 日(火)
回収期限 :平成 23 年5月 31 日(火)まで
集計期間 :平成 23 年5月 31 日(火)まで



調査対象と回答総数

調査対象件数は約 314 事業所(※)で、 156 企業が回答(回収率約 49.7%)。 

対象事業所に調査用紙をFAX送信し、回答をFAXにて返信していただいた。

※前橋商工会議所 議員・青年部・女性会、(社)前橋青年会議所(一部)、その他企業から構成される。



結果総評

1.震災直後の影響

 震災発生直後には電力、燃料、需要が不足するなどの問題が発生することで何かしらの業務障害が発生した事業所が大多数を占めた。特に計画停電の実施は業務に著しい障害をもたらし、それに対して停電に合わせた業務内容の工夫、機会ロスを防ぐための顧客対応の充実を図った事業所が多くみられた。 
 震災前後を比較した景況は、大きく需要が減少したと回答する企業が半数以上みられたが、急激な資金繰りの悪化はさほどみられなかったと考えられる。しかし、このまま売上の減少が続けば、半年を過ぎたあたりから徐々に資金繰りが苦しくなる企業が増加することが想定される。阪神大震災でもみられた、企業倒産件数が震災翌年(1996 年)に増加している例を踏まえると今後の経済動向について予断を許さない状況にあるといえる。



2.経営上の懸念材料

 今後想定される経営上のリスクは電力不足、需要不足、物資の不足、金融に対する不安を挙げる企業が多くみられた。また節電対策について、自社での対策を検討している事業所が多数を占め、対応内容も自助努力によるものが中心であることから政府による業種別などの支援策の充実が求められる。

 今後の対応策については確実な仕事の確保を重視する傾向にあった。また物資の確保や取引先の分散化などのリスクヘッジをとるといった自社の努力を重視しながら、助成金や制度融資等の公的支援策をミックスさせて企業経営にあたるという傾向にあった。
 また今回の震災を契機に取り組み始めたこととして、バックアップ機能の強化や重要書類の管理強化、緊急連絡網の整備などと非常事態が起きたときに少ない影響で乗り切るかといったクライシスマネジメントを強化する事業所が多くみられた。
 しかしながら、対応策をとるにも中小企業の多くは巨額の資金を要する設備投資を行う体力が必ずしもないことから、企業活動への影響を最小限にするための十分な対応策の展開が求められる。



3.企業への積極的支援の必要性

 アンケート結果では企業・業界での自助・共助による努力はもちろんであるが、安定した電力供給体制、節電対策などの情報伝達、放射能対策や税制の優遇措置など公共セクターからの支援によって不確実な経済状況を払拭する施策展開を期待する傾向がみられた。
 そこで商工会議所では支援策などについて正確な情報発信を図りつつ、企業側のニーズを的確に捉えることが求められる。そして支援策の内容を精査しながら中小企業にとって真の意味で役立つものになるよう要望を行っていく必要がある。